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interview with Ken Sumitani

interview with Ken Sumitani

川崎のディープ・ハウス

――ステレオシティ、ロング・インタヴュー

取材:メタル、WHY 写真:沼田 学 Aug 01,2011 UP
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STEREOCiTI
Kawasaki

Mojuba Underground

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 シカゴ/デトロイト・フォロアー、ミニマル以降のモダン・ハウスのなかで、いま、世界中から注目を集めているDJ/プロデューサーがステレオシティの名義で知られている炭谷賢である。
 東京を中心にDJとしてキャリアを積んできたステレオシティは、2008年にスペインの〈ディープ・エクスプローラー〉から「Citifunk EP」でデビューすると2009年にベルリンのドン・ウィリアムスが主宰する〈モジュバ〉からリリースされた「Early Light」が早くもスマッシュ・ヒット、ローレンスやダニエル・ベルのプレイリストにもあがったその野太いキックのディープ・ハウスは、発売から2年以上たったいまも国内各地にあるクラブやDJバーで鳴り響いている。こうしたことは、消費が早いクラブ・ミュージックのなかでは珍しいことだ。
 今回〈モジュバ〉からリリースされたファースト・アルバム『Kawasaki』はステレオシティが生まれ育った街である川崎を走る列車のフィールド・レコーディングで幕を開ける。そしてシカゴ、デトロイトへの愛情のもとに作られた粗野で荒々しくも繊細なディープ・ハウスが続いていく。美しいサウンド・スケープをもったアルバムなら良く見かけるが、タイトル曲の"Kawasaki"も含め、しっかりとストーリーが展開されていくアルバムは近年では珍しい。
 アルバムは3.11以前に作られたものであるが、職人的な細部へのこだわりで丹念に作りこまれた楽曲は時代性を超越する強度を持ったものだ。そしてこのご時勢に3枚組みのLPをリリースしたところにも意気込みを感じる。DJの腕もたしかなもので、自分と白石隆之さんとWHYでオーガナイズしているパーティ〈Sweet〉にもゲストで出演してもらった。

全盛期の〈MANIIAC LOVE〉はぶっ飛んでて面白かったよね。"SLOWMOTION"とかもハマってたよ。ハード・ハウスのパーティとかで、麻布の〈Mission〉とかもたまに連れてかれたけど、けっこう嫌いじゃなかった。

METAL:国内盤CDのライナーを執筆しているのは白石隆之さん。デトロイティッシュ・サウンドの日本人プロデューサーでは草分け的な存在ですよね。

STEREOCiTI:白石さんのことは、実はそんな昔から知ってたわけじゃなくて......実際に会う前に、白石さんの方からMyspaceでコンタクトしてくれたことがあったんだけど、実際に顔を合わせたのは去年。安田くん(WHY)が紹介してくれたんだよね? その頃、白石さんが長野の〈Human Race Nation〉から出したリミックス(G.I.O.N./Jack Frost - Takayuki Shiraishi Remix)がすごい好きで。それで白石さんのアルバム『SLOW SHOUTIN'』(2002年/Pickin' Mashroom)を買って聴いたら「2002年の時点でこんなことやってた人がいたんだ」ってびっくりして、すごく好きになって。で、それから自分のDJでも白石さんの曲を使ったり、LOOPの〈Sweet〉にDJで呼んでもらったりとか、交流ができていった感じ。

METAL:アルバムの話に入る前に、音楽的な背景を聞いておきたいんですけど。

STEREOCiTI:もともとブラック・ミュージックはジャズから入って。ジャズっていうのは、モダン・ジャズね。高1のとき、最初にコルトレーン聴いて、そこからずっとジャズ集めてて。ジャズ聴いて、なんだろ......音楽の「間」みたいなのを最初に意識したのかな。ギターでバンドもやってたよ。前に〈Deep Explorer〉からリリースした曲では、自分でギター弾いてる。今回のアルバムではギターは弾いてないけど、"A day"って曲でベースを弾いてる。

METAL:最初はレゲエのDJだったんですよね。

STEREOCiTI:そうそう(笑)。ボブ・マーリーが好きで。若いとき横浜で働いてた頃に、まわりの人種もレゲエが多くて、みんなヤーマン、ヤーマン言ってる感じで(笑)。そういうなかで育ってたから自然とレゲエが好きになって、ジャマイカの煙たい空気感とか、ダーティーでヤバい感じにも憧れたし、その流れでレゲエのDJをやりはじめた。ダンスホールね。その後もっとモダンなビートが好きになって、その流れとレゲエがうまくクロスオーヴァーした感じが面白くて。その直後にちょうどアシッド・ジャズのムーヴメントがあって乗っかって、その後トリップホップって流れ(笑)。それは学校(桑沢デザイン研究所)に通ってた頃だったんだけど、その頃学校の友だちなんかと六本木の〈Juice〉(現在はBullet'S)でイヴェントはじめたの。で、その頃、人を踊らせる究極はやっぱりハウスにあるんじゃないかと思って聴きはじめたんだよね。でもその頃はよくわからないからもうテキトー。ニューヨークもシカゴもUKもごちゃまぜで。それで、自分の好みを追っていったら、その頃の音ではテクノがそうで。それでデトロイトとか聴いて、DJでテクノをやってる頃に、〈MANIAC LOVE〉に入っていった感じ。

WHY:テクノを最初にいいと思ったのも「間」みたいな部分なんでしょうか?

STEREOCiTI:いやぁ、超踊れる、ぶっ飛べるみたいな。単純なところだよ、ほんと。

METAL:その頃の決定的な、強烈なパーティ体験ってあるんですか?

STEREOCiTI:全盛期の〈MANIIAC LOVE〉はぶっ飛んでて面白かったよね。"SLOWMOTION"とかもハマってたよ。ハード・ハウスのパーティとかで、麻布の〈Mission〉とかもたまに連れてかれたけど、けっこう嫌いじゃなかった。90年代の、ただれたパーティ感は面白いよね。初期のパーティ体験がずっと地下だったから、クラブ・ミュージックにはずっと地下のイメージ持ってる。

WHY:それで〈MANIIAC LOVE〉の"CYCLE"でハウスのDJをはじめた頃から、いまみたいなスタイルなんですか?

STEREOCiTI:デモテープ聴いてもらって「いいね」って言ってもらったのはハード・ミニマルなんだけど、実際"CYCLE"ではじめた頃は、いまで言うテック・ハウス。「テック・ハウス」って言葉大嫌いなんだけど(笑)。〈Prescription〉とか〈Guidance〉、〈KDJ〉とかが好きで。その頃のセットはディープ・ハウス......いまとあんまり変わらない感じのディープ・ハウスからスタートして、〈Paper Recordings〉とか〈Glasgow Underground〉みたいなUKっぽいっていうか、ちょっとグルーヴがあったまった感じで山崎さん(Sublime)かWADAさんに繋ぐ、という感じ。

WHY:ブースで照明をいじりながらWADAさんがDJやってる姿を見ていて、DJのやり方を覚えたって言う話でしたけど。

STEREOCiTI:やり方っていうか、クセね。WADAさんのクセはついた。 1曲1曲EQ全部違うし、出音をちゃんと聴くってところとかそうだし。ミックスの仕方は自分とはちょっと違うんだけど、テクノのミックスってこうやってやるんだ、っていうのは、全部やっぱりWADAさんから学んだかな。

METAL:僕の場合なんですけど、WADAさんのDJを近くて見てて、EQ以外で学んだのはディスコDJのメンタリティなんですよね。客もよく見てるし。

STEREOCiTI:わかるわかる、本当そう。エンターティナーというか、あれがDJだよね。

METAL:使ってるネタ自体は大ネタってほとんど使わないんだけど、場の雰囲気に合わせた踊らせ方をする。

STEREOCiTI:そうだね、それは本当に俺も学んだところ。場の流れを作るというか、場を見てるよね。好きな曲をかけるだけ、っていうようなDJいるからね、やっぱり。

WHY:その"CYCLE"時代や、TAKAMORI.Kさんとやってた"Better Days"の頃は、本名のSumitani名義でDJしてたんですよね。"STEREOCiTI"と名乗る経緯、由来は?

STEREOCiTI:10年ぐらい前にシカゴに1ヶ月ぐらい滞在してたの。シカゴに友だちが住んでて、そこに泊まってたんだけど、そのアパートメントの裏庭の壁にスプレーで「STEREO CITY」って書いてあって。アーティスト名はそこから来てる。で、その友だちの実家がデトロイトで。ちょうどサンクス・ギビング・デイの頃で、実家に帰るっていうからデトロイトまで一緒に車でついて行って。

METAL:シカゴ~デトロイト、どうでしたか?

STEREOCiTI:その友だちはドラマーで、彼の仲間たちがダウンタウンに住んでて、その連中がみんなトラック作ってたんだよね。やっぱりダウンタウンてもともと危なくて、人なんかあんまり住んでない......そこにしか住めない黒人しかいない場所だったんだけど、若いアーティストがどんどん引っ越してきて暮らし始めてる時期だったんだよね。だから結構白人も多かった。デトロイトでは、IBEX(Tony Ollivierra......Neil Ollivierra=The Detroit Escalator Companyの実弟)も一緒に遊んでた。後でこっちで会ったら覚えてなかったけど(笑)

METAL:リクルーズとかも同じ一派ですよね。

STEREOCiTI:リクルーズはあの辺の大学生で、たしかダウンタウンからはちょっと離れたところに住んでたんだよね。

METAL:デトロイトで「第二世代以降」と呼ばれる人たちとの交流があって、彼らがそこで作っていた音楽が、自分の核になってきた部分ってあるんでしょうか。

STEREOCiTI:全然ない。リクルーズは「この人すげえなぁ」と思って研究したところも実はあるんだけど......曲は好きなんだけど、ああいう白人っぽいグルーヴは、自分のやりたいところではなかったんだよね。それよりも、ハウスにしても黒人がやってるもの。当時だったらリック・ウェイドやケニー(・ディクソン)、セオ(・パリッシュ)、あの辺のもっさりしたハウスのグルーヴが好きで。ゴスペルっぽいハウスとか、エディ・フォークスとか。いまは逆にデトロイトのハウスよりもテクノのほうが好きなんだけど。
 黒人のグルーヴが好きなんだよね。ファンクというか、ずれた感じ、粘ってる感じが好き。グルーヴに関しては、一時期ノー・ミルクと一緒にすごい研究してたんだよね。ここをこうズラすとこうなる、みたいな。ディスコとか聴いて、「なんでこのグルーヴが出るんだろう?」とか研究したよ。だから自分の曲もイーヴンっぽく聴こえても実はイーヴンじゃない。個人的な好みだけど、きっちりイーブンに貼っつけてるトラックとかは、聴いた瞬間ダメ。あとドラムマシンのイーヴンと、シーケンス・ソフトとかで置いたイーヴンは全然違うんだよね。ドラム組む時も、ドラムマシンのノリそのままで作りたい曲以外は、全部自分で細かく組んでグルーヴ作ってるから。そういう作業は好きかな。

取材:メタル、WHY(2011年8月01日)

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