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Denki Groove
Apr 11,2011 UP

Denki Groove電気グルーヴのゴールデンヒッツ~Due To Contract

キューン・ソニー

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 数か月前に『SNOOZER』でタナソー相手に話したことだけれど、いまどき海外で活動したり、海外のレーベルから作品を出すこと自体は20年前と比較して特筆すべき話でもなくなった。ある意味ではいいことだが、ロック・バンドでもDJでも、いまではそれは珍しくないし、むしろこの日本において自力でレーベルを運営して、それを継続させ、作品を出し続けるほうがずっと特筆すべき話に思える。そっちのほうがより困難そうだ。
 また、最初に有力な海外レーベルと契約した先駆的な3人、ケンイシイや横田進、DJクラッシュをはじめ、そしてコーネリアスやボアダムスといった連中はただたんに海外リリースに成功したわけでない。彼らは海外の連中に大きな影響を与えていった。欧米の物真似に終わらず、むしろ音の更新をうながす存在だった。
 とはいえ、90年代初頭の日本にとって海外リリースが夢だったのは事実だ。当時UKに行くと、オーディオ・アクティヴやUFOといった連中の知名度の高さに驚かされたものだったが、洋楽で育ったミュージシャンにすればそれはひとつの夢であり憧れだった。およそ20年前の、そうした海外リリースがはじまりつつあった時代に電気グルーヴはデビューしている。「808ステイトは大好きだけれど、同じことをやろうとは思わない」と、当時の彼らは言った。

 電気グルーヴが国際的な成功を得ることはなかったけれど、彼らはケンイシイやDJクラッシュにはできないことをやった。それは、この国で暮らしている、より多くの子供たちに新しい音を喜んでもらうことだった。アンダーグラウンドのエネルギーを咀嚼して、ポップに吐いた。それはそれでまったくもって価値のある行為だし、誰にでもできることでもない(うちの子供たちも電気グルーヴにはノれる)。彼らは働き者の農夫のように土地を広く耕し、たくさんの種を蒔いた。多かれ少なかれ、日本のテクノ・シーンは彼らの大衆性の恩恵を授かっている。ゆえに石野卓球はこの10年、日本においてもっともリスペクトされるDJ/プロデューサーになった。
 つまり電気グルーヴには"ポップ・スピリット"というものがあった。その精神は、あまたのJポップのクリシェでもある恋愛ソングや自己啓発ソングとは100万光年かけ離れた場所で燃えていた。彼らはテクノとナンセンス・ギャグを追求したが、5人のマニアに褒められる音よりも5000人の子供が喜ぶそれを選び、何か言ったつもりになっている人を嘲笑するかのように意味のない言葉を好んだ。彼らのポップ・スピリットには因習打破的なところがあった。電気グルーヴは面白かったのではない。面白すぎたのだ。ドラッギーなテクノ・バラード"虹"は、ある種の狂乱の彼方に広がる素晴らしい叙情だが、こうした曲は無我夢中のなかの過剰さがなければ生まれなかっただろう。

 この時期になぜベスト盤なのかわからないが、とにかく出た。選曲は『ビタミン』以降からで、個人的に思い入れのあるファーストとセカンドからは選ばれてない。また、シングル中心なのであの素晴らしい2枚――『ビタミン』と『ドラゴン』のなかの君が好きなあの曲も入っていないかもしれない。それでもこのベスト盤には愛された曲が詰まっているし、砂原良徳のマスタリングとエディットが楽しめる内容になっている(とくに"虹"の新しいヴァージョンが僕は気に入っている)。
 最近は時代が一周も二周もしているので、シンセ・ポップやレイヴ・ソングはトレンドにもなっているのだけれど、アルバムを聴いていると自分がいま何年に生きているのかこんがらがる。それだけ彼らの音は時代とともにあった。時間は情け容赦なく、嵐のように過ぎていった。本当に、アッという間だった。なかば自虐的なアートワークと電気グルーヴという文字は、2011年の春にはそれなりの想像を掻き立てる。

野田 努

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