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googolplex
May 24,2012 UP E王

googolplexbehind the eyes

foundation/octave soul

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 2年前、秋の武道館に安全地帯のライヴを観に行ったとき、まったくといいほどMCはなく、唯一、ステージで語ったことが、その年の6月に自殺したパク・ヨンハのことだった。根も葉もないネットの中傷を苦にして自殺したチェ・ジンシルや撮影を拒否してアメリカまで逃げたハン・イェスルもそうだけど、勝ち負けがはっきりと出てしまう韓国で芸能活動を持続するのはかなりのプレッシャーがあるらしく、なかなか玉置浩二のように意味不明な行動は取れないらしい(すぐ斜め前に青田典子がいて、アンコールで飛び出してきた玉置浩二に窒息しそうなほどディープ・キスをされていたw)。

 とはいえ、3大事務所(SM、YG、JYP)が牛耳る芸能界に反発する動きも強くなっているそうで、ソウルに「空中キャンプ」というライヴ・ハウスを設立したメンバーのひとりから5~6年前に聞いた話では、政治的なテーマを歌詞にしてはいけないなど、まだまだ規制も多いなか、細々とインディ・ロックも表現をやめてはいないということだった。どんなバンドがいるのか尋ねたところ「モノマネの域は出ていない」と彼も正直に言うので、あえて聴いてみたものはなかった。そのことを、いま、少し悔いている。グーゴルプレックスというバンドのことを知ってしまったからである(ソウルのライヴ・ハウス「空中キャンプ」に関しては『すばらしいフィッシュマンズの本』(INFAS)に収録された前田毅氏のリポートに詳しい)。

 韓国の〈ファウンデイション・レコーズ〉というレーベルがどういったものなのかさっぱりわからないんだけど、昨年、3枚目となるコンピレイション・アルバムに(個人的にはダグラス・ベンフォードのレシピなどを思い出す)〈エル・レコーズ〉風の柔らかくて春の日差しのような"シーブリーズ"を提供したグーゴルプレックスは、前後して4曲入りEP「エンドレスリー・ハイ&ディープ」でデビューし、それらから1曲を除いてすべてを採録し、新曲を5曲加えたデビュー・アルバムを今年の初めにリリース。これをオクターヴ・ソウルが国内盤としてライセンスしたということになるのかな。レーベルの謳い文句はウーリッヒ・シュナウスなどを引き合いに出したグローファイ・ドリーム・ポップ・ユニット、もしくは韓国版の逆輸入チルウェイヴとか。......まあ、最初はそうかなと思って聴いていて、韓国語で「夢」と題された5曲目で......ちょっと待てよ。

 フィッシュマンズに対する韓国からのアンサー......とは言わない。言わないけれど、中盤辺りから、あれッと思う箇所が何回も出てくる。「夢」に出てくるリフはまさかサンプリングじゃないかと思うほどそれっぽいし、"レット・イット・フロウ"から(韓国語で)"愚痴(ゲット・ロスト)"に変わる辺りもそうとしか聴こえない......。空耳アワーだろう。レバノンにもフィッシュマンズを思わせるスカ・バンドはいるし、空耳といえば、トーキング・ヘッズが叫ぶ「マッド・クラブ!」が......いや。そういえば、最近、人間ドックに入って......聴力には何も異常はなかった。しかし、ぜんぜんあり得る話ではないだろうか。ソウルの「空中キャンプ」では毎年、フィッシュマンズ・ナイトが開かれ、いつも100人ぐらいは集まると言っていた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴きに来た客が全員、楽器を持って演奏しはじめた......じゃないけれど、韓国のフィッシュマンズ・ナイトから生まれたバンドがいてもおかしくはない。ユニバーサル・コーリアが一回は対訳つきでフィッシュマンズのバック・カタログをリリースしようとしたこともあったぐらいで、佐藤伸治の歌詞がわからなくても音楽だけで伝わるものもあるということだろうから(フランスにもフィッシュマンズを神と仰ぐサイトがある)。

 とはいえ、フィッシュマンズと何ひとつ関係がなくても、"エンドレスリー・ハイ・アンド・ディープ"の夢見るような感覚や"チャーピング・バーズ"のトロピカル気分はそれだけで充分に素敵な気分をもたらしてくれる。グローファイ・ドリーム・ポップでもチルウェイヴでもなんでもいい。いまは、この甘ったるいシンセサイザーに少しでも長く包まれていたい(......って、それじゃ橋元UFOと同じじゃん!)。

 全曲試聴→http://soundcloud.com/fndt/sets/googolplex-behind-the-eyes

 DJとギターの男性二人組み(?)→http://blog.naver.com/

 *80年代の広島でハードコアをやっていた同名バンドに注意

三田 格

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