「この空の花-長岡花火物語」
A MOVIE

「この空の花-長岡花火物語」

■大林宣彦監督作品(2012年)2時間40分
出演 : 松雪泰子、髙嶋政宏、原田夏希、猪股南、富司純子、寺島咲、尾美としのり、柄本明、他
■OFFICIAL HP http://konosoranohana.jp/

「この空の花 - 長岡花火物語」
2011年3月11日から未来へ。どう超えるのか! どう翔ぶか!! それをイメージする事が今、現在を生きる僕らの最大の課題であり、明日を手繰り寄せる力ともなるだろう。その試みの一つとして、この映画は製作された。
 2009年8月3日。僕は生まれて初めて、長岡花火を見ていた。ちょっとした御縁からお誘いを受けて、一夜のんびり、妻と二人、花火見物と洒落込んだ。で、泣いた。
 映画のような花火だね、と語り合ったのだ。映画とは目に映るものを超えて、画面には映らないものをすら感じさせる。姿や形のみならず、人の心までが見えて来る。だから、泣けるのだ。この花火、単に咲いて開くばかりか、散って消えた後の暗闇に、花火の心が見えるぞ。
 お隣りにいらした森民夫長岡市長に「この花火の心の物語は何でしょう?」。「はい。復興、追悼、祈りの花火です」。日本の敗戦後二年目の夏から、2004年の中越地震を経て、毎年長岡空襲と同じ8月1日の夜10時30分から2日3日と打ち上げられる。「だから土、日じゃないんですね」。「単なる観光イベントじゃありませんから」、とにこにこ。
 そもそもは戊辰戦争でこの里が丸まる焼失した時、支援に送られた米百俵を「復興とは未来を生きる子どもたちを育てる事、古里に誇りを持ち、豊かな心を育んで」、と庶民の子も入学できる国漢学校創設に使った小林虎三郎の精神が、今も市民の尊敬の上に活きている長岡。長岡花火は、その象徴であった。
 ――世界中の爆弾を花火に変えて打ち上げたら、世界から戦争が無くなるのにな、とは貼絵『長岡の花火』の作者・山下清画伯の言葉。その心根を共有するシベリヤ抑留体験者でもある長岡の伝説の花火師・嘉瀬誠次さんは、ゆっくりしんなり咲いて散る花火が、心に残って好きだと仰しゃる。
 「花火は光と音、爆弾と同じだから怖しくて嫌い」、とあの日背に負うた子を一つと半才で死なせた七里アイさんは語る。「けれど戦争を知っている私たちが死んだら誰も子どもたちにその事を伝えられぬから」、と今は戦争の語り部に。
 現在の日本は、戦争を忘れる事で平和になった。その平和は、故にどこか覚束無く、また次の戦争だって起きかねない。そんな事は、決してあってはならない。
 そこで、日本の敗戦後の復興のあり様は、果して正しかったのであろうか、という問い直しが始まりつつある。あの2011年3月11日を体験したのは、僕らの未来をより平和で幸福な国に創造するために、この課題について、皆で切実に考える時。その時、『長岡花火』に象徴される長岡市のあり様は、一つの大いなるヒントとなり得るのではないか。
 長岡市を一つの、現代のワンダーランドと捉え、この映画は始まる。どうか皆さんも一人の旅人となって、思いがけないウサギたちと出逢い、語り合いながら、この映画の中をさ迷ってみて下さい。これも映画なるものの、一つの時代を生きる有り様であるだろうから。

大林宣彦 「この空の花」OFFICIAL HP「大林宣彦氏からの手紙」より


■「この空の花」長岡花火物語
<ストーリー>
天草の地方紙記者・遠藤玲子(松雪泰子)が長岡を訪れたことには幾つかの理由があった。ひとつは中越地震の体験を経て、2011年3月11日に起きた東日本大震災に於いていち早く被災者を受け入れた長岡市を新聞記者として見詰めること。そしてもうひとつは、何年も音信が途絶えていたかつての恋人・片山健一(髙嶋政宏)からふいに届いた手紙に心惹かれたこと。山古志から届いた片山の手紙には、自分が教師を勤める高校で女子学生・元木花(猪股南)が書いた『まだ戦争には間に合う』という舞台を上演するので玲子に観て欲しいと書いてあり、更にはなによりも「長岡の花火を見て欲しい、長岡の花火はお祭りじゃない、空襲や地震で亡くなった人たちへの追悼の花火、復興への祈りの花火なんだ」という結びの言葉が強く胸に染み、導かれるように訪れたのだ。こうして2011年夏。長岡を旅する玲子は行く先々で出逢う人々と、数々の不思議な体験を重ねてゆく。そしてその不思議な体験のほとんどが、実際に起きた長岡の歴史と織り合わさっているのだと理解したとき、物語は過去、現在、未来へと時をまたぎ、誰も体験したことのない世界へと紡がれてゆく━━!