2020/08/19 WED19:0024:00

SUNTORY HALL SUMMER FESTIVAL 2020 Presents
一柳慧の「2020東京アヴァンギャルド宣言」

●出演:一柳慧、高橋悠治、山本和智、川島素晴、杉山洋一、山根明季子、森円花、松平敬、有馬純寿 ●司会|沼野雄司

■現代音楽界のリビングレジェンド=一柳慧が再びSUPER DOMMUNEに降臨!! 盟友レジェンド=高橋悠治を迎え、現代音楽の未来を担う総勢5名の若手作曲家達と、ポストパンデミック以降のアヴァンギャルドを語り合う!!!!!

8月22日から8月30日にわたりサントリーホールで開催される「サントリーホールサマーフェスティバル2020」の一環としてのスペシャルプログラム配信決定!現代音楽界のリビングレジェンド=一柳慧(作曲家・ピアニスト)が再びSUPER DOMMUNEに降臨し、盟友レジェンド=高橋悠治(作曲家・ピアニスト)を迎え、現代音楽の未来を担う総勢5名の若手作曲家達とポストパンデミック以降のアヴァンギャルド音楽を語り合います。題して『一柳慧の「2020東京アヴァンギャルド宣言」』!!! 当日は音楽学者の沼野雄司の進行の元、現代音楽最前衛の楽曲も多数紹介!さらには、DOMMUNE 史上初生ピアノ持込によりレジェンドたちによるライヴ演奏も!? With / After コロナ時代の日本のアヴァンギャルドは今夜ここから!皆様どうぞお見逃しなく!!!!!!!

●「21世紀のアヴァンギャルド音楽の旅へ」一柳 慧

1950年代から60年代にかけて、さまざまな分野の高揚した環境の中で生まれ培われた20世紀のアヴァンギャルド音楽の精神。そこで横溢していた燃えるような情熱に裏付けられた自由な精神や、勇気ある行動力、闊達な冒険心、そして理想を志向する精神性などの生き生きとした営みは、強い刻印として当時の多くの作曲家達の根幹をつかさどる原動力であった。
だがその高揚した状況も、年を経るに従い、次第に衰退し、当時活躍した多くの人が亡くなったこともあって、昨今の弛緩した状況へと変質しつつある。現在はこれからの芸術音楽をどのように考え、創造してゆけばよいのかが厳しく問われている時代だと言ってもよいだろう。一方でAIの台頭や、デジタル化など、科学的思考が顕著に進む中、音楽が有する身体的感触や、作家特有の個の存在感などが失われてきていることへの配慮もおろそかに出来ない筈である。
幸い今の日本には、音楽の歴史を新しく変革しようとする若い創造者が次々と誕生してきている。今回はそのひとにぎりの人達の作品しか紹介できないもどかしさが残るが、モダニズムから発祥した前衛創成期の絶対性や進歩的教条主義を超克し、より混成的また拡張的な21世紀のアヴァンギャルド音楽の世界への探検の旅をつくることができればと思っている。


■「ジョン・ケージの夕べ」1962年 東京文化会館 Photo by 吉岡康弘

●「これぞ2020年の“前衛音楽祭”だ!」片山杜秀

アヴァンギャルドはフランス語で前衛。元々は軍隊用語と言われる。本隊よりも前を行く。しばしば幾つかのグループに分かれている。真っ先に戦闘を始め、生き残る率も低い。でも、うまく行けば前線を死守し、前衛隊のどれかが、どこかに突破口を開く。そうか、この攻め口こそ、進むべき道か。日和見をしていた本隊はようやく自信をもって前衛のつけた道筋から攻め込む。 この軍隊用語が政治や芸術に転用された。まだ見ぬ未来のヴィジョンをいち早く思い描き、仮に応援がなくとも、大胆に突撃する。
すると、道なき道を行く前衛か、道が出来てから行く本隊か、道があってもなお足踏みする後衛かは、どう判別されるか。音楽だと響きの新しさを問題にする人が多い。むろん、それは大切な要素だ。だが今現在にすぐ消費されてしまう新奇さだけなら前衛として生き残れない。前衛はありうべき未来を切り開くのだから。瞬間芸だけではだめなのだ。音への斬新な創意と過去現在への批判意識と未来への希望の哲学の三位一体でなければ、本物の前衛ではない。
しかも、本物の前衛は今新しく生まれ起こるものにばかり見いだされるのではない。たとえば、19世紀の思想家、マルクスは今も本物の前衛だろう。昔の音楽でも今ますます未来とつながりそうな作品もあれば、新しい音楽でもいきなり骨董化している作品もある。
ここに恐るべき目利きが居る。一柳慧である。プロデュース公演の曲目を観よう。たとえば 1960 年代や90年代の高橋悠治、00年代のシュトックハウゼンやエリオット・カーターの曲がある。それらは回顧のための選曲ではないだろう。いずれも現在の文脈でますます未来につながりうる道を示す作品だろう。そして日本の中堅若手の作曲家たち。言葉の最良の意味で、見事なまでに本隊的性格を持ち合わせていないと、私見では感ずる人ばかりが、よくも揃ったものだ。
ではプロデューサー本人はどうか。文化勲章を受けるほどの大家が本隊的でない ということがありえようか。いや、一柳に限ってはありうる。グランド・オペラと交響曲と電子音楽と図形楽譜との間を遊撃的・機動的に行き来して倦まないこの作曲家に、誰もが納得し腑に落ち安心できる説明が与えられたことは未だ嘗てあるまい。一柳は依然として未来に開かれた謎である。
2020年にとってアクチュアルなアヴァンギャルドとは何か。本物の前衛はどこに? 演奏者の選択にもプロデューサーの意欲が色濃く反映されている。未来への大きな示唆が、この音楽祭には必ずある。


■「ジョン・ケージと一柳慧」1981年 高輪美術館 Photo by 松元徳彦

●一柳慧の「2020東京アヴァンギャルド宣言」<番組予定> 
※開催当日に内容・出演者が変更となる場合がございます

■19:00-19:50 Ⅰ「二人のレジェンドに訊く」
出演:一柳慧、高橋悠治 司会:沼野雄司
①サマーフェスティバル2020 ザ・プロデューサー・シリーズについて 東京アヴァンギャルド宣言とは?
② 高橋悠治作品について なぜ2作品?高橋悠治が考える「アヴァンギャルド」
③一柳、高橋が考える2020年の状況と新型コロナウイルスのことなど
■20:00-20:30 Ⅱ「サマーフェスティバルの歴史1」1989-1999年 サマーフェスティバルについて
出演:川島素晴、杉山洋一 司会:沼野雄司
■20:35-21:05 Ⅲ「サマーフェスティバルの歴史2」2000-2009年 サマーフェスティバルについて
出演:川島素晴、杉山洋一 司会:沼野雄司
■21:15-21:45 Ⅳ「シュトックハウゼン解体新書」シュトックハウゼンが、クラングで描こうとした世界とは
出演:有馬純寿、松平敬
■21:50-22:20 Ⅴ「サマーフェスティバルの歴史3」2010-2019年 サマーフェスティバルについて
出演:川島素晴、杉山洋一 他 司会:沼野雄司
■22:30-23:00 Ⅵ「若手と語るアヴァンギャルド(1)」
出演:川島素晴、鈴木優人、森円花 他 ​司会:沼野雄司
■23:05-23:35 Ⅶ「若手と語るアヴァンギャルド(2)」
出演:杉山洋一、山本和智、山根明季子 他 司会:沼野雄司
■23:40-23:55 Ⅷ「レジェンド再び」
出演:一柳慧、高橋悠治、川島素晴、杉山洋一 他 司会:沼野雄司

PROGRAM INFO
ENTRANCE ●新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、無観客配信と致します。このプログラムはライヴストリーミングでお楽しみください!!!!!