2021/04/02 FRI 19:00-23:00

■Publib Presents 実写版『Djent』ガイドブック

〜プログレッシヴ・メタルコアの究極形態

■TALK:脇田涼平、ハマザキカク(Publib)■MUSIC CLIP JOCKEY:脇田涼平、ハマザキカク

『ブルータルデスメタルガイドブック』と『デスコアガイドブック』を記した脇田涼平が、4年の時を経て『Djentガイドブック』をパブリブから出版!「プログレッシヴ・メタルコアの究極形態」として、一斉を風靡し、一時代を築き上げたDjent。以前は「演奏法」とされていたが、今となっては「ジャンル」として定着したと言っても過言ではない。ミュート・シンコペーション・ポリリズム・超絶テクニック・最先端プロダクションなどで知られるDjentの特徴は、近隣ジャンルに影響を与え、侵食しつつある。『Djentガイドブック』の中で紹介されている336バンド、474枚の音源の中から、MeshuggahやPeripheryなど特に重要なバンド、またHacktivistやBorn of Osiris、Sithu Ayeなど個性的なバンドをピックアップし、同ジャンルの成り立ちや特徴を徹底解説する。Djentの世界観や雰囲気を表したスタイリッシュでカラフルなビデオクリップも注目。聞き手・進行役は『Djentガイドブック』の編集者ハマザキカク。全Djentlemen、そしてエクストリーム・メタルファン必見!

■Djentって何?

メタルという音楽は、誕生してから今まで一度もその進化を止める事なく、今も日々変化が繰り返され、新たなサウンドが生まれている。本著では、プログレッシヴ・メタルが進化していく過程で生まれたDjent (ジェント)という音楽について紹介していきたい。これからDjentを知りたいという方には入門書となるように、ずっとDjentを聴いてきたファンにとっては歴史のアーカイヴとなるようなものになれば嬉しい。さて、まずはDjentという音楽がどんなものなのかを把握していこう。Djentを知る上で最初に聴くべき楽曲は、この音楽の代表的なバンドであるPeripheryの「Make Total Destroy」だ。このバンドの中心人物であるギタリスト、Misha Mansoorという人物はDjentという音楽の概念について、このように話している。
Djent (ジェント)とは、拍の位置に変化を加えたリズム (シンコペーション) や、複数の異なるリズムが同時進行するポリリズムを用いた、グルーヴィでヘヴィなプログレッシヴ・メタルサウンドを意味し、ブリッジミュートされたブルータルなリフ、不協和音を組み込んだ機械的なメロディや音像も特徴だ。
より噛み砕いて表現すると、「ズンズンと刻まれるギターのリズムが複雑であり、ノリが良いメタル」とでも言えるだろう。Djentであるかどうかを判断する材料として、ギターサウンドがどうであるかに注目して聴いてみると分りやすい。
ここでいくつか疑問が生まれると思う。ギターがグルーヴィで複雑であればそれはDjentなのか?Metallicaだって、Slayerだって複雑だと感じる人もいるかもしれない。もう少し詳しくDjentであるか否かを判断するのに必要な事を知ってみよう。 Djentは基本的にベースになっている音楽がメタルコアであり、そこにプログレッシヴなグルーヴを加えたものを指す。これはDjentを広めたのが、プログレッシヴ・メタルコア・バンドPeripheryである事が一番の理由であると言える。Peripheryがシーンに登場した事によって、Djent要素を強く打ち出すプログレッシヴ・メタルコアが盛り上がりを見せるようになっていく。
さあ、Djentがなんであるかを理解する為に、最初に知っておきたい以上の事を踏まえ、Djent代表曲を聴いてみよう。難しい事は考えず、耳や目で感じて欲しい。「これは絶対にDjentだ」とか、「これがDjentというのは間違いだ」という事は誰にも言えない。この言葉はとても曖昧だからだ。

■Mishaは誰に影響を受けたか

現在のDjentの概念を作ったのは、まぎれもなくPeripheryのMishaだ。彼がどのような経緯を経てDjentを意味付けたのかを考えてみよう。前述のMishaの発言は、彼がフォローしていたインターネットのフォーラムでの書き込みが元になっている。7弦ギタリストの情報交換の場であったsevenstring.orgのMeshuggahやDream Theaterのフォーラムで、MishaがMeshuggahのギターサウンドを言葉で表現した時に使用した擬音がDjentの語源であると言える。その表現方法はフォーラムを飛び出し、Facebookやredditといったコミュニティでも使用されるようになった。2020年6月にDragonForceのYouTubeチャンネルにMishaが出演した際、この発言について回想するシーンがあったので、気になる方はチェックしてみて欲しい。
MishaはPeripheryでの活動を始める前からギターオタクと言えるような人物であり、Meshuggahが彼のプレイスタイルの基礎を作ったと言っても過言ではない。Djentについて理解を深めようとする時、Peripheryと並んでその名前が登場するMeshuggahについて理解を深めておく事も大切だろう。

■Meshuggahがメタルにもたらした影響

Djentという表現方法は、実はMeshuggahも使っていたと言われている。ギタリストFredrik Thordendalは、バンドのファンから機材について質問された時に、ギターサウンドを表現する為に擬音を使っていたようだ。
Meshuggahが独自性の強いギターサウンドを鳴らすようになったのは、1995年にNuclear Blast Recordsからリリースしたセカンドアルバム『Destroy Erase Improve』からだ。元々はプログレッシヴなスラッシュメタル・バンドであったが、ギタリストのFredrikとMårten Hagströmは、当時Ibanezから発売されていたSteve Vaiモデルの7弦ギターのピックアップを改造して、強烈なグルーヴリフを追求し始めた。音楽的にもデスメタルに接近しながら、まったく新しいメタルを完成させ、シーンに衝撃を与えた。
この年、Fear Factoryがリリースしたアルバム『Demanufacture』も当時のメタル・シーンに変革をもたらした作品で、『Destroy Erase Improve』に近い質感を持ち合わせている。リリース日で言えばMeshuggahのほうが1ヶ月早く発売されているが、レコーディング・スケジュールで言えばFear Factoryのほうが早い。
また両者の違いはサウンドだけでなかった。Meshuggahはその複雑なスタイルと刷新的なサウンドで、機材オタクからの注目を一身に集めていた。Meshuggahのファン達は、彼らがどんな楽器を使用しているかに興味を持ち、議論がなされていたという。Meshuggahの人気はヨーロッパだけでなく、世界中に飛び火していき、そのフォロワーが生まれていった。Peripheryがそうであったように。

■人気に火がついたプログレッシヴ・メタルコア

Peripheryのデビューアルバム『Periphery』がリリースされた2010年前後には、有名なDjentバンドが数多く登場している。イギリスのミルトンキーンズで結成されたFellsilentは、2008年にBasick Recordsからアルバム『The Hidden Words』を発表。ハイボルテージの中に荒々しくも複雑なリフを組み込み、話題となった。彼らはその後、プログレッシヴ・ロックにDjentをブレンドしたTesseracTと、爆裂的なライブパフォーマンスが印象的なMonumentsというバンドにそれぞれ分裂し、Peripheryとは違う新たなDjentを鳴らした。
ヨーロッパからは他にも、オランダからTextures、スウェーデンのVildjarta~Humanity’s Last Breath、フランスのThe AlgorithmやUneven Structuresが2000年代中期から後期にかけて登場。Djentでありながら、ジャズやフュージョン、エレクトロ・ミュージックなどをブレンドし、Djentの持つ可能性を拡大。また、2010年代になるとUK Tech-Festと呼ばれる大規模なフェスティバルが始まり、世界中からDjentを始めとするプログレッシヴ・メタルやテクニカル系のバンドが集結、祭典が行われるようになった。
Peripheryが拠点とするアメリカからも次々とDjentを鳴らすバンドが登場。メタルコアやデスコアシーンで高い人気を誇ったロサンジェルスのVolumes、オリエンタルな雰囲気が魅力的なシカゴ出身のVeil of Maya、プログレッシヴ・ロック風味のおしゃれなサウンドをプレイしたインディアナポリス出身のThe Contortionist、シンフォニックな音色が光るイリノイ州出身のBorn of Osirisなど、メタルコア/デスコアのメインストリームで活躍の場を広げていった。
中でもDjentを含むプログレッシヴ・メタル・シーンに衝撃を与えたAnimals as Leadersの存在感は絶大だ。 2008年にワシントンD.C.にてギタリスト、Tosin Abasiのソロプロジェクトとしてスタートし、2009年のデビューアルバム『Animals as Leaders』は、Mishaがプロデュースを担当している。Abasiはサム・ピッキング (Thump / Thumping)と呼ばれる独特な奏法で、まったく新しいDjentサウンドを創造。その後はバンド形態となり、世界を飛び回るほどの人気を誇る。

■Polyphiaが登場、新たな時代へ

テキサス出身Polyphiaは、Djentムーヴメントが巻き起こった2010年に結成した。彼らは元々YouTubeにプレイスルー動画を投稿するベッドルーム・ミュージシャンであったが、甘いマスクで爆発的な人気を博した。活動当初はプログレッシヴ・メタルコア・バンドとして注目を集めたが、Equal Vision Recordsと契約してリリースされたデビューアルバム『Muse』は、Djentを取り入れたプログレッシヴ・ロックに、ファンクやマスロックのエレメンツを散りばめたソフトな質感が特徴的だ。他にもCHONもPolyphia同様Djentシーンに新風を巻き起こしている。
現在、Djentをはじめとするプログレッシヴ・メタルはメインストリームでも人気の高いジャンルであり、日々新しいサウンドを鳴らすバンドが登場する、アクティヴなジャンルだ。プログレッシヴ・メタルに特化したYouTubeチャンネルやSpotifyのプレイリスト、レーベルやウェブジンなどをチェックすれば、新鮮な情報を手に入れる事が世界中の誰でも可能だ。次世代のスターが登場する日も遠くない未来かもしれない。

■創始者の思惑から離れ、一ジャンル化へ

前述の通り、Djentという言葉は曖昧で、MeshuggahのFredrikもPeripheryのMishaも、自身のバンドを「俺たちこそがDjentだ」などと発言した事はなく、むしろ自身のサウンドがDjentと呼ばれる事に対して否定的だったりもする。しかし彼らのサウンドが現在のメタルシーンに与えた影響は大きく、Djentがメタルの歴史において無視されるべきではない。一時的なムーヴメントだったとしても、それはいつか歴史の一部になる。
あるジャンルの生みの親や当事者達が、自らが意図せずにもたらしてしまったトレンド、あるいは新時代の幕開けに戸惑い、そのジャンルの存在に対してネガティヴな反応を示すのは、歴史上よく見られる光景である。「デスメタル」の語源は元々Possessedの曲、あるいはDeathがMantasとして活動していた時のアルバム「Death by Metal」など諸説あるが、彼らが意図的に「デスメタルというジャンルを作ろう」と思っていたわけではないだろう。「ブラックメタル」の語源はVenomの2ndアルバム『Black Metal』が由来とされるが、彼らが奏でる音や世界観・風貌は、今現在一般的に認識されているブラックメタルの主流であるノルウェー発祥の「2nd Wave of Black Metal」のスタイルと大きく異なる。
ジャンルの誕生は偶然に左右され、先駆者・パイオニアの思惑を超えて、どれだけ後続のバンドに影響を与え、そしてフォロワーが生まれるかに左右されるのではないだろうか。
そしてこれらのジャンルと同じ様に、Djentはもうそろそろパイオニア達の思惑を超えて、一つのジャンルとして確立されるに至ったと見なしても良いのではないだろうか。現にある特定のバンドのことを、「あのバンドはDjentだ」と名指しすることは特段不自然な事ではない。インターネットの記事や雑誌、SNS、ストリーミング・サーヴィスにおいても、「Djent」はある一定の音的傾向が共通しているカテゴリーを示すタームとして、当たり前の様に用いられている。
この様なことから「Djent」という演奏法を表す概念が、過渡的な流行ではなく、サブジャンルとして定着したと考えている。そして一時代を築き上げたこの現象を後世に残す為に、書籍としてまとめる意義を感じ、本書を記したのである。

■脇田涼平(ワキタ リョウヘイ)

1991年岐阜県中津川市出身。大学入学を機に上京し、在学中はHi-STANDARDやNAMBA69のマーチャンダイス製作やツアー運営に携わる仕事をしながら、海外アーティストのツアーブッキングを行うRNR TOURS (ex. Romantic Nobita Records)を設立。2016年からはライターとしても書籍『ブルータルデスメタルガイドブック』や『デスコアガイドブック』を出版。雑誌への寄稿なども行っている。現在は音楽情報サイトRIFF CULT / PUNKLOIDの運営にも携わっている。

PROGRAM INFO | スタジオ観覧限定35名有観客配信
ENTRANCE ¥2000(ソーシャルディスタンシングを強化し、35人限定でスタジオ観覧者受け付けます。Peatixでスタジオ観覧チケット販売中 ▶︎https://peatix.com/event/1873535
PLACE 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO9F「SUPER DOMMUNE」
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