DAY1:2021/05/03 MON - DAY2:2021/05/04 TUE

ハーモニー・コリン監督最新作『ビーチ・バム まじめに不真面目』公開記念DOMMUNEスペシャル

「逃走論2020s」〜『ビーチ・バム』を1000倍楽しむために

■DAY1:2021/05/03 MON 19:00-23:00

■第1部:「Who is ハーモニー・コリン?」〜90年代ストリートが生んだダーク・プリンスの肖像

出演:稲田浩(ライスプレス代表・RiCE編集長/ex. EYESCREAM創刊編集長、CUT副編集長)
マキヒロチ(漫画家/『スケッチー』『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』)
中原昌也(ミュージシャン、作家)、宇川直宏(現在美術家/DOMMUNE)

■第2部:「『ビーチ・バム』からのハーモニー・コリン入門

出演:降矢聡(グッチーズ・フリースクール)
柳英里紗(俳優・映画監督)、小川あん(俳優)

■第3部:DJ:HairStylistics “THE BEACHBUM SPECIAL SET”

■DAY2:2021/05/04 TUE 19:00-23:00

■第1部:「ハーモニー・コリンと現代アメリカ映画」〜After Lost in America

出演:廣瀬純(哲学・映画批評/『シネマの大義』)、入江哲朗(アメリカ思想史/『火星の旅人』)
上條葉月(字幕翻訳/PigionFilms)、鍵和田啓介(エディター・ライター/POPEYE)

■第2部:「FUN IS A FUCKING GUN

出演:青山真治(映画監督)、菊地成孔(音楽家/文筆家)
中原昌也(ミュージシャン、作家)、​町山広美(放送作家)

■第3部:「中原昌也によるハーモニーコリンインタビュー

出演:ハーモニー・コリン(映画監督|from US)、中原昌也(ミュージシャン、作家)

■第4部:DJ:ムードマン “THE BEACHBUM SPECIAL SET”

■永遠の“恐るべき子供”=ハーモニー・コリンの新境地にして最高傑作『ビーチ・バム』公開記念!総勢14名のゲストが語り尽くす奇跡の2日間。

19歳での『KIDS/キッズ』(95)、22歳での『ガンモ』(97)によってセンセーショナルなデビューを飾り、世紀末のストリートから生まれた新時代の「アンファン・テリブル(恐るべき子供)」として全世界の熱狂を浴びたハーモニー・コリン。
20歳そこそこで、映画界にとどまらず90年代ユース・カルチャーを象徴する存在となってしまった彼は当時こう語っていた。意気揚々と。「僕が生まれたのは、誰も見たことがない映画を作るため、映画の限界を押し広げるためだ。」彼が果たしてこの後、どんな道を歩むのか、“何者”になるのか、私たちポップの観客、ならぬ消費者たちは大いなる期待とともに彼に賛美の限りを尽くした。
しかし、あるいはその期待から逃げるように、彼はその後しばらく、ポップのメインストリートからは姿を消す。精神を病み、映画そのものに興味を失ってしまい、「幽霊のようになって」各地を放浪していた30歳のころ、その苦難のさなかでもしかし彼はこう語っていた。「でも僕にはほかに得意なことがないんだ。車もコンピュータもテレビも直せない。スポーツもできない。映画作りだけが、僕にできる唯一のことだと思う。夢を作り出すことのできる作業だから。」
それから十数年――。ハーモニー・コリンが、世界を再び驚喜させた『スプリング・ブレイカーズ』(12)を経て、ついに、本当の最高傑作を撮った!
その登場時、病んだアメリカ、産業としての映画に唾を吐きつけ、映画を破壊したとも言われた彼が、人間の愚かさ儚さを丸ごと肯定し、こんなに幸せで、真っ直ぐな、美しい生の賛歌を高らかに詠いあげるだなんて。こんな死ぬほど感動的な映画を撮ることになるだなんて、誰が想像しただろう。
「天才」としての周囲からの期待に、大人になった“恐るべき子供”は、マシュー・マコノヒー扮する元・天才詩人ムーンドッグは、爆笑と酩酊と下品なポエムで応える。唾を、煙と一緒に飲み込んで。
天才はいつも早すぎる。その時には誰にも見えていなかった、もちえなかったビジョンを持ち、はからずも未来を幻視してしまう。周囲からは、全く理解の得られないビジョン。2019年全米公開時、まだパンデミック以前の社会ではこの映画の真価に気付けていた者は悲しいかなわずかだったという。アメリカかぶれのちょっとした映画好きがよく参照しているらしいサイトーーRottenTomatoやIMDBを見れば明らかなように。だから、この2年遅れの日本での公開はむしろ僥倖というべきだろう。いよいよ4/30(金)より公開となるハーモニー・コリンの最新ド傑作『ビーチ・バム』は、この戒厳令下の日本では果たしてどう受け止められるのだろうか?
デビュー時より取材を重ね、ハーモニー・コリンをフックアップしてきた編集者、学生時代に『KISD/キッズ』『ガンモ』に出会い衝撃を受けたクリエエイター、『mid90s』『WAVES』などハーモニー・コリンの強い影響下にある近年のストリート映画から彼の足跡を逆照射しようとする論客…などなど、あらゆる角度からハーモニー・コリンに触れてきたゲストが総勢14人、ここ渋谷PARCO9階、ポップ・カルチャーの最終基地DOMMUNEに集結。『ビーチ・バム』を、『ビーチ・バム』から見える風景、を二日間にわたって語りつくす8時間の超特濃スペシャル番組!必見オブ必見!

■『ビーチ・バム まじめに不真面目』作品情報

アメリカ最南端、フロリダ州の“楽園”キーウェスト島で、自由気ままな放蕩生活を送る元・天才詩人のムーンドッグ。とある事件をきっかけに無一文になりホームレスと化したムーンドッグは、クレージーな仲間を頼りに、旅に出るが…。成長しない、反省しない、期待しないをモットーに生きる彼の人生に、感動と笑いが止まらない、爽快コメディ。
4/30(金)よりkino cinema横浜みなとみらいほか全国順次公開

【監督・脚本】ハーモニー・コリン 【撮影】ブノワ・デビエ 【美術】エリオット・ホステッター 【編集】ダグラス・クライス 【衣装】ハイディ・ビヴェンス 【音楽】ジョン・デブニー 【出演】マシュー・マコノヒー、スヌープ・ドッグ、アイラ・フィッシャー、ステファニア・オーウェン、ザック・エフ ロン、ジョナ・ヒル、マーティン・ローレンス、ジミー・バフェット

今宵、先鋭的な論考でハーモニー・コリン「ビーチバム」を解いて下さった”JAZZDOMMUNISTERS"菊地成孔先輩から配信直後にメールがきた!!!!!!!!!

宇川直宏さま。今日はとても楽しかったです。
中原くんに打ち上げに誘われたんですが、毎度野暮用で付き合いが悪く、スンマセン。いつかゆっくり飲みたいですね。皆さんにヨロシクお伝えください。また、本番で言い切れなかった事を送信します。

僕は、ハーモニー・コリンの特別な研究家ではないので、他の方々のご意見は掛け値無しに全て尊重します。その上で、ですが、僕が言いたかった事をまとめると、こういう事になります。
それは「プログラムピクチュアとは何か?」という事です。なぜプログラムピクチュアは存在し、観客をスカッとさせるのでしょうか?そのほとんどにおいて「主人公が破天荒(=自由)で楽しい」という点は重要だと思います。例えは古いですが、スティーブン・ソダーバーグが「セックスと嘘とビデオテープ」でカンヌのパルムドールを撮ったあと、ハリウッド資本にフックアップされ「オーシャンズ」の監督になります。
「オーシャンズ」はプログラムピクチュアです。ですので、ここではソダーバーグは、文化的にも金銭的にも「プログラムピクチュアの作り手」に変貌しました。しかし、肝心のソダーバーグは「自由」でしょうか?おそらく、ネット世論とハリウッドコードと、資本家のリクエスト等々によって、大変不自由でしょう。作品が成功しても、ソダーバーグの魂自体は不自由だと思います。
合衆国には、まだまだプログラムピクチュアがあります。ランボーだとかワイルドスピードだとか、DC系もマーベル系もあります。皆さんはああした作品から「自由」を感じるでしょうか?
僕は感じません(だからツマラナイ。とか、だからあれはもうプログラムピクチュアではない。と言っているのではありません)。シリーズ化と、消費され、搾取されるという意味では、資本主義的に不自由だ。ということもできます。加速主義とかはよくわかりませんが、資本主義もまだまだ魅力的です。
「ビーチバム」は、おそらく「ビーチバム2 / ジャメイカ大捜査線」とか「ビーチバム3 / 悲しきピューリッツァー」とかいう「シリーズ化」(これは「シリアルナンバリング」と同義語です)から自由ですし、本番中に発言したように、インターネット世界からも、合衆国州法からも自由です。更に言えば、主人公のムーンドッグだけではなく、映画自体が、前述、合衆国の実際のプログラムピクチュアのような資本主義的な不自由からも自由です。僕は、この自由さが本作の肝であると思います。「表面の楽しさの裏に」「何かがある」のではなく「何もない」点が、この作品の、無限とも思える幸福感と自由の発生源だと思います。
ハーモニーコリンは、期せずして(と仮設しますが)、「プログラムピクチュア」の古典的手法を抑えたアートフィルムを撮った。「自由」の追求の果てに、プログラムピクチュアになってしまった。という言い方もできます。つまり「ビーチバム」は、1作だけで継続しない「オルタナ・プログラムピクチュア」「インディー・プログラムピクチュア」と呼ぶべきものだと僕は思います。(Text by 菊地成孔)

加山雄三の若大将シリーズ!! 森繁久弥の社長シリーズ!! 植木等のクレージー映画!! 対してマシュー・マコノヒーのビーチバムシリーズ!!!!! 1作だけで継続しない「オルタナ・プログラムピクチュア」とは、本当に鋭いっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!! (Text by 宇川直宏)

せっかくなので、番組中リクエストの多かった雑誌「FIGARO」に掲載中の、宇川直宏ハーモニー・コリン「ビーチバム」評全文テキストも掲載致します!!!!!!!

ビーチバム、なんという狂おしく愛おしい楽園であろう!! 96年から99年までの3年間、サンフランシスコに住んでいた筆者は、確かに"あの世界"に浸っていたことがある。しかし"あの世界"はすでにドットコムバブルによって消え失せたとアメリカの友人達はジェントリフィケーションを呪っている。西海岸にフォーカスを合わせるならば、99年~2000年のシリコンバレーの経済的熱狂は、フリーキーかつホーリーなビーチバム世界をサンフランシスコから一層したと言っても過言ではない。しかし、この映画の舞台となったのアメリカ最南端の楽園、フロリダ州キーウエスト島にはまだ”あの世界”は脈打っているのか?
そう、インターネットは全てを変えた。インターネット元年とされる95年は、現実からエスケープする場所にネットがあった。しかし現在は、現実がインターネットからエスケープする場所になった。そしてネット世界には、あらゆるクロッシング・リアリティが鼓動し、メタバースの中では新しいソーシャルが生まれ、ポスト・リアリティを写し出している。そう、人々はオンラインゲームの世界にビーチバム的楽園を見出している。「あつまれどうぶつの森」「フォートナイト」そして「マインクラフト」の世界でただただハングアウトする”パーティロイヤル”というコミュニケーションは新しい現実(ポストリアリティ)においてのビーチバム的世界かもしれない。
しかし、そこにムーンドッグはいるのか?コンプラもポリコレもブッチぎったあらゆるハラスメントの巣窟といっても過言ではない彼の存在は、息苦しい現代社会からもSNSからも"完全にアウト”だと弾き出されるアウトサイダーの極限であろう。しかしなぜ"あの世界”では、彼の存在は崇められるのか?そうムーンドッグのソウルの根底には無垢な愛が脈打っている。そしてそのことを人々は心の中で気付いている。聖人は時として野良猫のように天真爛漫に振る舞い、時として神のように世界を包み込む。凡人と聖人の間には、物理空間とヴァーチャルリアリティー程の格差があるのだ!!!! ムーンドッグはとにかくサイケデリックにストーンしていて“公共”で”有限”な世界では飽き足らず、常に“幻想”で”無限”の楽園を求め、現実世界を流離っている。そうポストパンデミックなライフスタイルは、ビーチバムを求めているに違いない。これこそがニューノーマルを超えたノーノーマル!真のフリーフォームなのだ!!!!!! 超絶必見!!!!!!!(Text by 宇川直宏)

■2019 年/アメリカ/95 分/カラー/シネスコ
原題: The Beach Bum/字幕翻訳:平井かおり/提供:木下グループ 配給:キノシネマ
© 2019 BEACH BUM FILM HOLDINGS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

PROGRAM INFO
ENTRANCE ●新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、無観客配信と致します。このプログラムはライヴストリーミングでお楽しみください!!!!!