■独自の批評軸でトークを繰り広げ、文化全般を聴覚で網羅できる百科事典を構築していく公開生配信／収録型ポッドキャスト番組audible ORIGINAL「DOMMUNE RADIOPEDIA」シーズン６がついに始動!!! 宮台真司xダースレイダーの＜夜のDOMMUNE大学＞が満を持して開講!!!!! ｢死に損なった２人のコンテンツ大学」Contents University by buddy nearly died. 現実を夢のように生き、夢を現実のように生きる〜Live a real as a dream, live a dream as a real

■死に損なった２人のコンテンツ大学　第3回
昭和が「微熱」だけではなく一方通行の「屋上」を伴ったのは、なぜか?

｢昭和の微熱」と対になって「昭和の屋上」があった。文字通り屋上だけを舞台とした初めて屋上映画として「ゆけゆけ2度目の処女｣(若松孝二)を前回見た｡
屋上とは「どこかに行けそうで、どこにも行けない」場所。でも「地上のつまらなさを共有する者だけが集える」場所だった。
宮台システム論には、<社会>＝「社会｣(法空間)＋｢社会の外｣(法外=アジール)という恒等式がある。それで言えば、昭和の屋上は｢社会の外｣だった。
まず言葉を定義する。

大分割：⟨世界⟩＝あらゆる全体・対・⟨社会⟩＝コミュニケーション可能な全体
⟨社会⟩の小分割：｢社会｣＝法生活・対・｢社会の外｣＝法外生活(掟生活)

宮台システム論では、⟨世界⟩＝⟨社会⟩の外＋⟨社会⟩だ。先に話した宮台システム論の、⟨社会⟩＝｢社会｣＋｢社会の外｣を代入すると、以下の恒等式を得る。

⟨世界⟩＝⟨社会⟩の外＋｢社会の外｣＋「社会」

この基本恒等式には「時間バージョン」と「空間バージョン」の２つがあってコロラリー（系）をなす。それは以下の通り。

①時間バージョン：⟨世界⟩＝物理時間＋祝祭時間（法外）＋日常時間（法）
②空間バージョン：⟨世界⟩＝手付かずの自然＋里山･異界（掟）＋里（法）

両バージョンともに、抽象的には　⟨世界⟩＝外＋緩衝帯＋内という形をとるが、これが屋上映画では、⟨世界⟩＝そら＋屋上＋地上と隠喩化されることになる。

さて、屋上映画によって提示される「根本的な謎」が２つある。まずは、これを解かなければならない。

①｢どこかに行けそう｣とはどういうことか? ｢どこかに行きたい」のはなぜか？
②｢どこにも行けない｣のはなぜ?かつての祝祭なら｢平時に｣戻るだけなのに。

次に、それらとは別に屋上映画には２パタンある。発散（一方通行）と、往還（往相還相）である。それはなにを意味するか？これを解かなければならない。

①地上から屋上にあがって１つになり、そら（空）へと旅立つ≒散華 [発散]
②地上から屋上にあがって１つになり、地上に戻る＝通過儀礼･翻身 [往還]

屋上映画の系列をリストする。屋上は文字通りのものとは限らない。屋上＝アジール＝緩衝帯（｢自然｣でもなく｢社会｣でもない）。密室情事や荒野や森にもなるだろう。　
＊　●は、できれば取り上げたい作品。■は、必ず取り上げたい特に重要な作品

[昭和の屋上映画]９本

○壁の中の秘事（若松孝二）1965 [発散]：日常→密室情事→死
○胎児が密漁する時（若松孝二）1966 [発散]^*：日常→密室情事→死
■欲望（ミケランジェロ･アントニーニ）1967 [往還]：日常→公園殺人→日常
○殺しの烙印（鈴木清順）1967[発散]*：日常→No1バトル→死
■ゆけゆけ2度目の処女（若松孝二）1969 [発散]*：地上→屋上→空中DIVE
■理由なき暴行（若松孝二）1970[発散]*：新宿→江ノ島→死
●ラスト･タンゴ･イン･パリ(ベルナルド･ベルトリッチ)1973 [発散]：日常→密室情事→死
■祭りの準備（黒木和雄）1975[発散]：里→情事＆火災→上京
■水のないブール（若松孝二）1982 [往還]：日常→水のないPool→日常※
＊印をつけた作品は、足立正生脚本（参加または監修を含む）。

以上の通り、昭和の屋上映画は殆どが[発散]の形式。対照的に、平成･令和の屋上映画は殆どが往還の[形式]だ。なぜだろう？これは考えるべき問いである。

[平成･令和の屋上映画]９本

○ガタカ（アンドリュー･ニコル）1998 [発散]：日常→密会→片道Rocket
■日曜日は終わらない（高橋陽一郎）1999 [発散]：日常→密会→片道Rocket
●ザ・ビーチ（ダニー･ボイル）2000 [往還]：日常→ビーチ→犯罪→日常
■リリィ･シュシュのすべて(岩井俊二)2001 [往還]：日常→ビーチ→犯罪→日常
■トロピカル･マラディ（Ａ･ウィーラセタクン）2004 [往還]：日常→密林(→日常)
●そうして私たちはプールで金魚を(長久允)2017 [往還]：日常→Pool(→日常)
○EXIT Strategy（Travis Bible）2018 [往還]：日常→タイムループ→日常
■ジーマ･ブルー（デビッド･フィンチャー製作）2019 [往還]：日常→宇宙→日常

｢日常→○○→日常」において「２度目の日常」は再帰的だから、全体は通過儀礼を構成することになる。通過儀礼は「離陸→渾沌→着陸」の形式を持つ。どこに着陸･着地したか?

｢社会のクソ化｣や｢人のクズ化｣にも拘わらず、最高峰でみれば映画の質はしっかり保たれている。人類の意識の動態や分布を考える時にヒントになる。文字通り｢切りクズ｣問題だ｡
番組では■の９本を取り扱う(昭和５本、平成･令和４本)。また、以上のリストは最小限に留めてある。他にもピックアップしようとして諦めた作品が多数ある。

audible ORIGINAL「DOMMUNE RADIOPEDIA」〜超文化大百科!! SEASON6

（過去アーカイヴ全104巻（約400本）は、Amazon Musicに格納されていますので、そちらもぜひお聴きください！）

■ポッドキャスト配信日時：毎週火曜日
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